油切りリング

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圧縮機の潤滑

2020/07/13

 機械の潤滑は金属の機械部品同志が接触し摩擦熱が発生する箇所に潤滑と冷却を兼ねて適用されます。往復動圧縮機の潤滑は粘度の違いにより大きく分けて2箇所有ります。一つはモーターあるいはガスエンジンによって駆動されるクランクシャフトとそれにつながるコンロッド、クロスヘッドの軸受等摺動部であり、もう一つはシリンダー内でガスを圧縮するピストン周りの摺動部です。クランクシャフト周りの潤滑油を外部油、ピストン周りのを内部油と呼んでいます。
 潤滑油の粘度は各メーカー様によって基準値がありますが、内部油の粘度は外部油より高くとります。クランクシャフト周りはガスの影響を受けない大気圧環境下で、稼働による潤滑油の上昇温度は圧縮機の大小にかかわらずほぼ40℃前後なので、その温度で油切れを起こさない粘度は決まってきます。一方内部油はピストンによるガス圧縮によりガス温度は高温になり、さらにピストン並びにピストンロッドの摺動による摺動熱で潤滑油温度は上昇しそれによる粘度低下を考慮し外部油より高い粘度の油種を選択します。

 ピストン周りの摺動部は圧縮ガスをシールするピストンリング、ピストンそのものをサポートするライダーリングそしてピストンの往復動を伝達しているピストンロッドのシリンダー貫通部をガスシールするロッドパッキンです。
 リング、パッキン類の材質は最近では取扱圧力が30Mpa以下のものについては鋳鉄、ホワイトメタル、LBC等の金属メタルからテフロン等の樹脂製に置き換わって来ています。樹脂製については金属メタルに比べて圧力あるいは温度の限界が低いので適用範囲は狭まりますが軽量及び相手材との馴染みやすさから、かなり一般的に使用されて来ています。さらに5Mpa以下の低圧については樹脂の特性から内部油を使用しない無潤滑も可能になっています。LNG,LPG等の低温圧縮機あるいはシステム上油混入を忌避する圧縮機など潤滑油を使用出来ないケースに対して樹脂製のリング類は都合がよいのです。
 一方外部油は給油装置から供給されて最初にクランクシャフトの軸受を潤滑します。そこからクランクピン、クロスヘッドピンを潤滑し最後にクロスヘッド摺動部に到達してクランクシャフト室の潤滑油たまり部に戻ります。クロスヘッド摺動部のクロスヘッド室はクロスヘッドの往復動で大量の油飛沫で充満しており、この部屋と隣りのガス雰囲気室の仕切り壁内に雰囲気室からクロスヘッド室にガスが漏れないためのシールパッキンとクロスヘッド室から雰囲気室へ潤滑油がもれないための油切りリングが組み込まれます。
 ガスのクロスヘッド室への漏れはガスが可燃性の場合は非常に危険なのでガス雰囲気室を2部屋にしたり、窒素パージあるいは窒素シールを施したりロッドパッキンの数を増やしたり工夫します。一方潤滑油の雰囲気室への漏れはピストンロッド表面を伝わり、最悪シリンダー内部に侵入するので内部油を使用している場合は内部油粘度を低下させたり、零℃以下の取扱いガスあるいは油忌避をともなうガスなど絶対侵入させてはならない場合など、この油切りリングは重要です。材質は鋳鉄、ホワイト、LBC、ラバーそして樹脂と多様です。形状は油をロッド表面から剝がすエッジ、剝がれた油を外周に逃がす溝等ほぼ定型化していますがメーカー様は苦労しています。材質を変えたりガータスプリングの締め具合を変えたりと色々工夫するのですが組み始めは良く油が切れますが次第に漏れ出すといった具合です。

 ところでこのリングのエッジ、ロッド表面の薄膜油をそぎ落とすのですからその方向はクロスヘッド室へ向かっているのが普通ですが油漏れ防止に良い結果がなかなか得られない時、これを逆向きにシリンダー方向へ向けて見たらいかがでしょう。思わぬ結果が得られるかもしれません。

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